フラット化するリサーチ業務

米国のマーケティング会社が日本の調査会社へ調査業務を発注する。日本の調査会社は実査を行い、データ入力を日本の業者へ依頼する。だが日本の入力業者は実際には入力しない。回収票をスキャンして電子ファイル化し、中国の大連へ電送する。中国の業者が数千票を僅か数日で入力するのだ。入力データは日本の業者を経由して調査会社へ納品される。その入力データは、次にインドの集計専門の業者へ送られる。3時間半の時差で集計され翌朝にはExcelファイルがメールで届いているわけだ。この間、誰もお互いに顔を合わせず、全てメール(限りなく配送・通信コストゼロ)で事が進む。
そんな「フラット」な世界が既にリサーチ業務にも広がっています。


弊社の競合相手はもはや国内にとどまらず、インド、中国なのかもしれません。とは言っても、英語の集計表ならともかく、例えばインドで日本語にどこまで対応できるかは疑問です。中国の大連には日本語対応が可能な入力業者が多く存在しますが(詳しくはフラット化する世界を)、実際に弊社も日本の会社に外注した際、実際の入力は大連で行われていました。
フラット化する世界(上)

また、レポート作成やOAコーディングにおいては、単に日本語ができるだけでなく、ノウハウ、経験、さらにはマーケットリサーチ全般の知識も必要になるのでフラット化はそう簡単ではないでしょう。また、昨今のインド、中国の人件費の上昇や、日本での間接業務の発生によって海外にアウトソースするメリットが本当にあるのかどうか見極めねばなりません。(データ入力では調査票を電子ファイル化するための日数、コストが発生します。国内で調査票を宅急便で翌日配送して入力作業した場合とトータルで日数、コストを考慮する必要があります。)
アウトソースの内容について見てみると、今後はより業務が細分化されてアウトソースされていく傾向があるかもしれません。例えば現在、調査業務は「実査」「データ入力」「集計」「レポート作成」に大別されてアウトソースされますが、データ入力→「入力」「データ変換・加工」、集計→「OAコーディング(とコードフレームの作成)」「クロス集計」「多変量などのデータ解析」、レポート作成→「グラフ作成」「コメント作成」といったようにそれぞれ異なる性質の能力が要求されます。「入力」「グラフ作成」などは仕様さえ決まれば比較的単純労働です。「OAコーディング」「多変量解析」「レポートのコメント作成」などは、知識・経験も必要になります。どこにアウトソースするかよりも何と何をどこにアウトソースするかが重要になります。
もっとも弊社自体、顧客が東京都内に集中している中で、郊外に事務所を構えていることで、賃料やその他経費が低コストで運営でき、したがって、受注コストを低く抑えることが可能となっており、ある意味「プチ」フラット化を実現していると言えるかもしれません。どこに立地しているかでなく、何ができるかが重要なのではないでしょうか。